2010年9月8日更新
前面入口付近 奥はホテル棟 2005年6月
厚生年金ホール(北側) 2005年6月
九州厚生年金会館大ホール この日の演目は「マタイ受難曲」 ※クリックでパノラマ 2010年3月
ワルカー製パイプオルガン 合奏曲では利用しない この日もオルガンは別途持ち込み 2010年3月
大ホール観客席裏の休憩室 2010年3月
九州厚生年金会館は、社会保険庁認可の厚生年金事業振興団が運営する複合施設。九州に厚生年金の本格的ホールをという話が持ち上がり、当時九州最大の都市圏・北九州に白羽の矢が立った。1970~80年代にかけて北九州に立地した公益施設で、「九州」を冠したものはこういう理由が多い。
会館は九州屈指の客席総数2200席を誇る大ホールを核として、大中小の会議室と宴会場、レストラン、客室数95のホテルなどで構成する。「ウェルシティ小倉」という愛称は世間一般には浸透しなかった。2010年10月からは運営が民間に移り、「アルモニーサンク北九州ソレイユホール」という長たらしい名称になる。
北九州はかつて文化不毛の地と呼ばれた。厚生年金大ホールはそんな時代の北九州に似合わしい多目的ホールで、西日本最大級のパイプオルガンを舞台左手に設置する。類い稀な大型楽器で慢心を飾り立て、ホールの音響効果を台無しにした。国内外の交響楽団が来演でオルガン付の楽曲を演奏する場合にも、このワルカー製パイプオルガンが利用されることはない。
わたしは初めてこのホールを訪ねたとき、首をかしげた。眼前の状況が理解できなかった。こんな愚の骨頂が現実であるはずがない。演奏会が終わり、おもむろに近寄ってまじまじと眺め回し、そうか可動式のオルガンかと膝を打った。「さすが日本だ、オルガンもハイテクなのだな」と。可動装置はどこにも見当たらなかったが、演奏する際は定位置に移動するに違いない。
オルガンをどこに設置すべきかは当然みな知っていたろう。そこに肩書きの立派な阿呆がやってきて、舞台の真ん中にオルガンを固定されたら、映写会その他のときに邪魔ではないかと難癖をつけた。もしそうなら、オルガンなんぞ諦めればよかった。多目的ホールに音楽ホールの真髄であるオルガンを設置しようという判断が間違っている。見栄を張りたかったのだろうが、恥をせきららに展示しているようなものだ。
わたしはこのホールへ行くたびにため息をつく。オルガンがまともな位置に設置されていれば、本格派の音楽ホールとして全国に名を轟かせたろう。このホールが竣工した時期、日本にオルガン付の大ホールはまだいくつもなかった。多目的ホールにオルガンを側面配置した先例としてNHKホール(1972)があるが、なぜあれを反面教師としないで、真似てしまったのだろう。
オルガンは別として、建築物としての評価は高かった。会館は第27回建築業協会賞(BCS賞)の受賞作品。真向かいに同じく安井建築設計事務所が手がけた大手町ビル(1995)がある。
2005年6月22日作成、2010年9月5日更新
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