2005年06月22日更新
九州厚生年金会館は、社会保険庁認可の厚生年金事業振興団が運営する施設。九州に厚生年金の本格的ホールをという話になり、当時九州最大の都市圏だった北九州市に立地した。1970~80年代にかけて北九州に立地した公益施設で、「九州」を冠したものはこういう安易な理由が多い。
会館は九州屈指の客席総数2200席を誇る大ホールを核として、大中小の会議室と宴会場、レストラン、客室数95のホテルなどで構成する。「ウェルシティ小倉」という愛称は世間一般にはあまり流通していない。
北九州はかつて文化不毛の地と呼ばれた。大ホールはそんな時代の北九州にふさわしく絢爛豪華な仕様で、西日本最大級のパイプオルガンを舞台左手に設置する。類い稀な大型楽器で慢心を飾り立て、ホールの音響効果を台無しにした。海外の交響楽団の公演などでオルガン付の楽曲が演奏される場合でも、これが利用されることはない。
わたしは初めてこのホールを訪ねたとき、首をかしげた。眼前の状況が理解できなかった。こんな愚の骨頂が現実であるはずがない。演奏会が終わり、おもむろに近寄ってまじまじと眺め回し、そうか可動式のオルガンかと膝を打った。「さすが日本だ、オルガンもハイテクなのだな」と。可動装置はどこにも見当たらなかったが、演奏する際は定位置に移動するに違いない。
オルガンという楽器が舞台中央奥に設置するものだという知識はあったろう。そこに肩書きの立派な阿呆がやってきて、舞台の真ん中にそんなものを固定すると映写会その他のときに邪魔になるではないかと難癖をつけた。もしそうなら、オルガンなんぞは諦めればよかった。見栄を張りたかったのだろうが、恥をせきららに展示しているようなものだ。
わたしはこのホールへ行くたびにため息をつく。オルガンがまともな位置に設置されていれば、本格派の音楽ホールとして全国に名を轟かせたろう。このホールが竣工した時期、日本にオルガン付の大ホールが他にあったろうか。
オルガンは別として、建築物としての評価は高かった。会館は第27回建築業協会賞(BCS賞)の受賞作品。真向かいに同じく安井建築設計事務所が手がけた大手町ビル(1995)がある。
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