2005年06月19日更新
正面
岸壁側
北九州の土木建築を語る上で八幡製鐵は外せない。八幡製鐵は北九州における最高級の提供者であり、最先端の試みだったからだ。その八幡製鐵が新日本製鐵となり、本社は東京へ移転して、鉄鋼業界は斜陽と呼ばれて久しい。近年は中国特需により盛り返しているが、八幡製鐵所は高炉1基体制に萎縮し、もはや回復する見込みがない。
三代目となる本事務所は、本社ではないためそうは呼ばれず、八幡製鐵所総合センターという。初代は1899年竣工の赤煉瓦に白花崗岩を配した建物で、製鐵所構内(八幡東区尾倉)にいまも保存される。二代目は1922年竣工の壮麗な宮殿風の大建築物で、枝光の丘の上に築いたが現存せず、跡地には鬱陶しいだけの安ホテルが建つ。
八幡製鉄所の事務所は工場の主力が八幡地区から戸畑地区へ移ったのに伴い、枝光の丘から戸畑工場の入口へ移ってきた。建物は官営製鉄所の工場ゆかりの丸屋根を乗せた箱を平行に並べ、あいだに玄関を設ける。車寄せの屋根も同じ意匠の丸屋根。古ギリシャ風の対称性を重視し、鉄を意識して金属質に仕上げた。
玄関両側に対称的に配置したスリットが見える。ここに機械室や空調設備、給水装置などを格納したらしい。建物のめぐりにはなにも見当たらない。設備類をきれいに建物内に格納したため、どこから見ても洗練された印象を受ける。
裏手は前面の二つの箱に対して直角に配置する。正面の芝生の緑地帯は30mほどで洞海湾に至り、岸壁には船舶を係留する。広大な庭園内に平面を贅沢に使った建物を配置するさまは、アメリカ国内の企業本社を思わせる。北九州の企業は質実剛健が主流で、本社は工場の一角に粗末な建物を建てる場合が多い。これほど景観に気遣う企業は他に見当たらない。
日本設計が発注者の意向に沿って設計したものとみれば悪くないが、八幡製鐵の創造物としては物足りない。八幡製鐵の創造物には強い自負があった。外注にそれを望むのは酷だろうか。
©2008 GaZONE Kanmon-Kitakyûsyû. Morrie & Co. All rights reserved.
Nippon Steel Yawata Works Headquarters