2005年08月13日更新
設計者の吉柳満は歓楽街の雑居ビルが得意な建築家だ。小さな店舗がごちゃごちゃ入居して、あちこちから出入りできるような猥雑な建物。それでいて、若者向けの飲食店が好んで入居したくなるような洒落た建物。
入居者はもっぱら個人や零細事業者だから、要求は多いが高い賃料は払えない。従って、建物はコンクリート打放しやスプレーで色をつけたようなハリボテになる。竣工時はクールでも、10年も経つと安普請が隠せない。
MANIWAは歓楽街立地ではないが、吉柳の歓楽街建築の遺伝子を受け継ぐ。建物は現代芸術の拠点として知られるCCA北九州の東側にあり、1~3階は店舗と駐車場、3~9階は共同住宅。建物本体は黒が基調で、表通りに面した北側(ファサード)、および東側と西側は銀色の羽目板を張りつけた化粧壁で塞ぐ。
ファサードは黒い階段室が銀色の化粧壁を切り裂いて建物上下を斜めに貫く。この階段室は横材のよろい張りで、外から見れば光を吸収して真っ黒に見えるが、内部が明るいことは塔屋あたりを見れば知れる。共同住宅だから背中(南側)には化粧壁はなく、横に連続する共用のベランダを各階に設ける。黒くなければ普通のワンルームマンション風だ。
吉柳はそれぞれの機能の玄関を自立させることを好む。この建物の玄関も吉柳風だ。真ん中の石張り部分が1階に入居するカーテンとインテリアの店・MANIWA(馬庭)用。両脇の階段は3階の店舗用。左手の階段は店舗奥にある住宅の玄関ホールへも繋がる。住宅の表玄関は駐車場入口のある東側の側面にある。
この玄関は見てくれはよいのだが、利便性は低そうだ。MANIWAはこんなに小さな玄関で店の存在をアピールできるのだろうか。レストランならこれでもよかろうが、物販店向きの玄関とは思えない。
建物はいまでも遠目にはクールだが、化粧壁は竣工以来一度も手入れしていないらしく、相当に汚らしい。玄関ホールへ入ると、スプレーしただけの黒い塗装がぼろぼろに剥がれ落ち、いたるところで白い下地が剥き出しになっている。解体前の建物かと疑うほどのひどいありさまだ。
建物にとって10年は一昔ではなく一日のように思える。しかし安普請で手入れもしなければたったの10年でこんなに傷むのだ。わたしは10年以上健康診断すら受けていない。この建物の状態を見ると、不摂生な自分の体はどうなっているのかと不安になる。
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Maniwa (Apartment)