2007年02月10日更新
建物外観俯瞰 写真引用 鹿島建設
戸畑サティの食品売り場(1階)
戸畑サティの化粧品売り場(1階)
飲食店街(1階)
2階(空中回廊面)~4階の吹き抜け 窓の外は戸畑駅前広場
階段室横の休憩所
左側が売り場拡張による専門店街(2階)
ワーナー・マイカル・シネマ(4階)
4階駐車場
戸畑サティは、組合施工の戸畑駅南口土地区画整理事業による郊外型の大型商業施設。物件は現在日本リテールファンド投資法人の資産で、マイカル九州は店子として20年間の定期借家契約(2025年まで有効?)を結ぶ。
定期借家契約というのは、「契約で定めた期間の満了により、更新されることなく確定的に借家契約が終了」する契約をいう。後継店を探すとは考えられず、建物は契約満了をもって解体撤去が予定されているのだろう。
施設は当世風の1核1モール式ではなく、総合スーパー拡張型の共同店舗だ。核店舗サティの売り場を担当する形で、専門店街や飲食店街を組み込む。店内にある約50の専門店とワーナーマイカルシネマズ、コナミスポーツクラブに対しては、マイカル九州が場所貸し(転貸)している。
戸畑駅南口にはかつて日立金属戸畑工場があった。戸畑工場は1910年、後に日産の創始者となる鮎川義介が創立した戸畑鋳物の本社工場として操業を開始した。日立金属は1973年に苅田に分工場を建設し、1980年に戸畑の工場を畳んで苅田へ全面移転した。
工場跡地では戸畑駅南口土地区画整理事業が1993年に着手した。戸畑区の地域中心核にふさわしい生活拠点の形成するため、1999年に戸畑駅舎を百数十メートル南に移して南口広場を新たに造成し、広場で分割された用地の南側に戸畑サティ、北側にウェルとばた(2002)を建設した。
当初は日立金属エステート(現、日立金属ソリューションズ)が大家、マイカル九州が店子という関係だった。2005年3月に不動産流動化により日本リテールファンドが取得し、MC戸畑なる中間法人を設立した。なお、日立金属ソリューションズは現在も建物の管理を受託している。
この建物は型にはめるのが難しい。郊外型の単一商業施設という分類だが、戸畑駅南口広場に面することから都市型商業施設の側面を併せ持つ。総合スーパーの箱でありながら、専門店街や飲食店街、複合映画館などを組み込み、内容的には1核1モール式のショッピングセンターと変わらない。
店舗棟は組み立て簡単を旨とする鉄骨(S)造の郊外型商業施設が多い中で、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造を採用した。百貨店張りにがっしりした店舗専用建物であり、ハリボテ感あふれるイオンとは比べ物にならない。ここは戸畑鋳物発祥の地だから、日立金属に思い入れがあって安普請を嫌ったのかもしれない。
戸畑駅から眺めると、南口広場の西側半分がL字状にサティの店舗棟に塞がれる。歩行者の動線は、高架駅から戸畑サティ2階の外部通路、さらに県道八幡戸畑線の空中回廊へ繋がり、ウェルとばたを経由して在来商業地の戸畑中本町商店街へいたる経路になっている。
自動車客は県道八幡戸畑線や天籟寺川側の区画道路から出入りする。駐車場棟は店舗棟を挟んで南口広場の反対側にあり、両者は全階を渡し廊下で連結する。玄関は駐車場組み込み式のイオンなどと異なり勝手口仕様ではなく、基本的に駅前側と同じ立派な構えだ。
ただ、駐車場棟は外観こそ店舗棟と揃いで見映えよいが、実際はS造のボロな上に、店舗棟とは床の高さが違う。店舗棟と駐車場棟の渡し廊下は段差を克服する必要があり、建物に対して水平方向に上り下りする。目的の階に駐車できなければ駐車場のエレベータを使うが、当然に階を上下しても駐車場に出るのであり、店舗入口だと誤解して乗り込むと唖然とする。
建物の箱型の部分に核店舗サティが入る。1階は食品スーパー、たこ焼きなどの軽食店、若者向け衣料品売り場など。2階は婦人服と紳士服の売り場、その類いの専門店。3階は子供服売り場、日用雑貨や家具売り場、その類いの専門店。
モール式と異なり、サティの売り場と専門店の売り場に明確な境はない。県道側と線路側の外壁に沿った区画が専門店で、内側がサティと棲み分けているが、店内の通路で隔てるだけだから、客は「専門店街」とは意識しまい。ブランドなどに疎ければ、なぜ支払いが別扱いなのかと疑問に思おう。
以上で終わりなら絵に描いたような総合スーパーだ。戸畑サティには箱型から増築したかのようにはみ出す長方形の部分(図の下、南口広場側)がある。2~4階は吹き抜け広場によって隔てられるから、別館という印象が強い。
この別館風の部分は1階が飲食店街、2階はゲームセンター、3階は専門店、4階はスポーツクラブ。なお、サティの床は3階までであり、サティ上の4階~5階には複合映画館がある。
ある程度以上の買い物のときは、消費意欲を掻き立てる「晴れ」の演出が必要だろう。総合スーパーは食品スーパーの拡張だから、食品売り場以外にも「日常」が染み付く。戸畑サティは地域密着型の商業施設としては最高の内容で、総合スーパーの究極の姿といえるが、それでも「晴れ」の感覚は生じなかった。
戸畑サティを運営するマイカル九州は2001年9月に経営破たんした。2003年9月から会社更生法下でイオンの支援を受けて経営再建に取り組み、2005年2月に更正手続きが終わった。イオンは2006年11月に同一商圏で競合する位置にイオン八幡東を開業させた。今後はイオン八幡東が「晴れ」(広域集客型)、戸畑サティが「日常」(地域密着型)として棲み分ける。
本当はイオン得意の焼畑商業で戸畑サティを潰してイオン八幡東に集約するのが理想だった。しかし焼畑はかなわず、複合映画館などの「晴れ」の装置を戸畑サティからイオン八幡東へ移転させることもできなかった。棲み分けると口先で言っても、現実の両者は手強いライバル店だ。
戸畑サティで強烈な印象を受けたのは駐車料金だった。ここは北九州市内・近郊の郊外型商業施設で唯一駐車料金がかかる。最初の1時間が無料で、サティで1000円買い物するか複合映画館を利用すれば2時間延長、飲食街で1000円以上食事すれば1時間延長、スポーツクラブ利用者は3時間延長になるそうだ。制限時間を越えると30分毎に150円の罰金。
料金体系からは、駐車場で一儲けしてやろうという下心は感ぜられない。戸畑サティは北九州市のパークアンドライド駐車場に指定されているくらいだから、無料にすると鉄道客が勝手に利用する懸念があったろう。事情はよく分かるが、同じく駅前立地のザ・モール小倉(1995)の駐車場は無料だ。時間貸し駐車場はやはり自動車客を遠ざけるのではないか。
都心部が流行らなくなった理由に、店舗付属駐車場の「制限時間を越えると罰金」がある。朝、店のシャッターを開けると客が行列を成して待っていた時代は遠のいた。人影まばらな北九州では、客はいてくれるだけでありがたい存在だ。客に購買金額を科し、時間で追い立て、用が済んだらとっとと出てゆけと言うようでは、街の賑わいは取り戻せない。
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