ガゾーン関門北九州圏

2005年12月04日更新

コムシティ

設計・施工
日本設計(設計)、大成建設+森本組+松尾組(施工)
竣工・規模等
1998年12月着工、2001年09月竣工、地上12階地下2階、敷地面積約1万3310㎡、建築面積約1万0600㎡、延床面積約9万2310㎡、事業費約309億円
場所
北九州市八幡西区黒崎3-15-3
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あらまし

コムシティは、再開発組合が施工した黒崎駅西地区市街地再開発事業による大型複合施設。「黒崎再生10年計画」の第一弾として2001年11月に開業した。

施設は本館と別館、駐車場の3棟で構成する。本館には筑豊電鉄「黒崎駅前駅」、西鉄と市営バスが発着する「黒崎バスセンター」、商業施設「コムシティ」、公益施設 子どもの館、ビジネスホテル 西鉄イン黒崎が入居する。別館はJR黒崎駅側にある4階建てで、商業店舗が入る。駐車場は「市営黒崎駅西駐車場」。

本館の商業施設を運営した黒崎ターミナルビルは開業からわずか1年半後の2003年5月に経営破たんした。本館の商業床は現在空家になっている。全部が破たんしたように誤解する向きがあるが、他の施設は関係がない。

事業の経緯

黒崎駅西地区市街地再開発準備組合が設立されたのは1972年だった。当初計画では延床面積20万㎡前後の巨大な建物が構想され、1979年のメイト黒崎の開業によって北九州最大の商業地に昇格した黒崎の地位を恒久化する狙いがあった。

しかし黒崎は1980年代半ばには店舗面積の極端な肥大化(オーバーフロア)に陥った。1980年代の北九州といえば構造不況のどん底であり、毎年1万人もの人口が流出した暗黒期だ。地域経済が衰退する中で、すでに供給過剰の黒崎にさらに巨艦を加える余地はなく、再開発は進まなかった。

一方、1980年代に下関と黒崎の二大拠点の興隆を受けて影の薄かった小倉は、1987年に就任した末吉興一市長が翌年に「北九州市ルネッサンス構想」を発表したことにより、北九州の都心と明確に位置づけられた。1990年に紫川を「200万都市圏の顔にする」としたマイタウン・マイリバー整備事業が始まり、小倉は1990年代の大開発期を迎えることになる。

黒崎は小倉の大開発を手をこまねいて眺めていたのではなく、小倉の第一弾(小倉そごう、ラフォーレ原宿・小倉、リーガロイヤルホテル小倉、ポステ)が竣工した1993年にコムシティの第一次試案を発表し、競争心を隠さなかった。1995年に第二次試案「はーとふるシティくろさき」を発表、1996年に第三次試案「コムくろさき」を発表して、これが決定稿になった。1997年に持床会社・黒崎ターミナルビルを設立し、ここに追撃体制は整った。

開業と破たん

再開発ビルが竣工したのは2001年9月。同3月に黒崎バスセンターが供用を開始、同10月に西鉄イン黒崎が開業、同11月に商業施設のコムシティ、子どもの館、市営黒崎駅西駐車場が開業して、コムシティは全面開業を迎えた。

本館の商業施設に関しては開業前から誤算が多かった。2000年にそごうが経営破たんして、隣接地に陣取るメイト黒崎の核店舗、黒崎そごうが閉店した影響が大きい。

コムシティが店子募集を始めた時期は、黒崎そごう跡の処理に忙殺された時期にあたる。八幡井筒屋がふれあい通りの小さな店舗を畳んでメイト黒崎へ移転入居したのは2001年10月。コムシティ全面開業の1ヶ月前だった。

有力な店子は老舗の井筒屋に靡いたため、黒崎ターミナルビルは窮余の策として変動家賃制(利益連動)を導入した。この方式は利益がなければ家賃を払う必要がないため、低収益店舗の安易な入居を促した。

コムシティは開業当初こそ北九州、筑豊、遠賀、宗像などの黒崎商圏から物見客を集めものの、客を呼び戻す魅力に欠いた。床当たりの売上は黒崎井筒屋の2分の5にも届かず、黒崎ターミナルビルは期待した家賃が得られなかった。

追い討ちをかけるようにリバーウォーク北九州の専門店街、デコシティが2003年4月に開業した。業績はさらに4割も落ち込み、黒崎ターミナルビルは同5月に民事再生法の適用を申請することになる。負債総額は約130億円。

あっけなかったのは、運営実態を不安視した金融機関が黒崎ターミナルビルへの融資を拒絶してきたためで、同社ははじめから資金調達の目処がついていなかった。開業して家賃が入るようになれば、金融機関も態度を軟化させると楽観的に考えて強行軍でコムシティを開業させた。しかし、金融機関は最後まで態度を変えなかった。

黒崎ターミナルビルは再開発組合から購入した床代金が支払えず不渡りを出し、救済を期待した北九州市からも督促状をつきつけられて、30年来の悲願だった大事業の終わりを悟った。

コムシティで特異だったのは、運営会社が匙を投げたのに店子が一致団結して営業の継続を強く望んだことだ。店子は変動家賃制なのだから、経営が家賃によって圧迫されることがない。店子にとっても期待はずれの建物だったろうが、居心地はよかったろう。みな身銭を切って開業資金を準備したのだから、その回収が終わるまではここに居座りたかった。

黒崎ターミナルビルは出店者会(96店舗)に共益費の値上げを要請したが、店子は低収益なのだから重い負担には耐えられない。同社はすぐさま民事再生法の適用を取り下げて自己破産の手続きに切り替えた。この間、わずか2週間しかなかった。

店子は態度を硬化させ、自己破産の後も賃貸借契約を盾にして抵抗を続けた。本館から最後の店子が撤退したのは、破たんから1年3ヵ月が経過した2004年9月のことだった。

誤った建築計画

コムシティはJR鹿児島線と一般国道3号に挟まれた細長い敷地に立地し、8階建ての羊羹形本体の上に、幅の狭い4階建ての羊羹形ホテルをやや斜めに乗せる。西側には構造材剥き出しの9階建ての自走式駐車場がある。

建物は内部の施設配置や動線計画が際立ってまずく、欠陥ビルではないかと非難された。集客装置として私鉄駅とバスセンターがあったが、動線は商業施設をバイパスする線引きだった。市営駐車場にも問題があった。民業圧迫への配慮から料金が高く、併設駐車場でありながら特定の業者へ恩恵を与えてはいけないという遠慮があり、使いにくかった。

複合施設といいながら施設がばらばらで、施設間流動が小さく、相乗効果が現れなかった。強力な集客力を発揮する核店舗があれば事情が変わったろうが、コムシティは単なる雑居ビルにすぎない。しかも建物は1日の自動車交通量が8万2000台に達する黒崎駅前にある。消費者の主流をなす自動車客は慢性的な渋滞を嫌って寄り付こうとしなかった。

建物が大きすぎたとはよく聞く話だが、問題の核心は建物の大小にあったわけではない。商圏が格段に狭いにもかかわらず同じ延床面積を有す戸畑サティは賑わっている。鉄道客を囲い込めば集客できる時代はとうに終わったのに、東京や大阪でしか通用しないターミナル駅を計画したことが間違いだった。

再生への道筋

黒崎周辺では2004年9月に沿道型商業施設のフレスポ黒崎が開業し、イオン八幡東田ショッピングセンターも開業準備の段階にある。有力な商業者が駅前の空家に目もくれず別の場所で自前の施設を建設するのは、きょうび地方で駅前型施設が集客できるはずがないと知っているからだ。

コムシティは黒崎の商業が都心型から郊外型へ急激な変貌を遂げる中で、商業施設として再生するのが日を追うごとに難しくなっている。地元黒崎を中心に移転新築予定の八幡西区役所を入居させてはどうかという意見が強いが、これも相当にハードルが高い。

破たんした黒崎ターミナルビルは北九州市の三セクだが、市が100%出資した企業ではない。株主構成は地権者44.9%、施工企業(大成建設、森本組、松尾組)21.7%、北九州市20%など。マスコミは筆頭株主である北九州市の責任を追及するが、市はおよそ主導権を握れる立場にない。

しかも、北九州市は再開発組合から「銀行融資を取り付けるには信用が必要だ」と懇願されて当事者になったのであり、この件に関しては当事者意識よりも被害者意識のほうが強い。実際、救済処置は取らず、一債権者として振舞ってきた。黒崎ターミナルビルの放漫経営の責任を全面的に引き受けたくない。

ここに八幡西区役所を入居させるには、北九州市が自前の債権を放棄した上で、他の債権者から債権を買い取る必要があろう。区役所を入居させるには建物の大改修も必要だ。区役所を新築するよりも高くつく。

自分の尻拭いでさえ風当たりは台風並みなのに、他人の尻拭いのために多額の税金を投入することになれば、どんな非難を浴びるか分からない。北九州市はいま以上にこの物件と関わることを恐れている。

コムシティは競売にかけるしかなかろう。有力な商業者が130億円で落札してくれれば丸く収まるが、買い手がいない以上は債権者に損害を引き受けてもらうしかない。建物が二束三文にまで値崩れすれば、いくらなんでも買い手はいよう。

不振を極めたとはいえ年間67億円も売り上げた商業施設がなぜ閉鎖されなければいけないのか。破たんの原因を突き止めれば、土地建物のコスト高に行き着く。建物が二束三文なら、破たん前の店子でも採算は取れる。

参照記事(他サイト)
黒崎駅西地区 - 北九州市の再開発
コムシティ(写真) - 生霊
関門通信でコムシティのニュース検索
関連項目(ガゾーン内)
メイト黒崎 - 黒崎駅東地区の大型商業施設。1核2モール式
セントシティ北九州 - 小倉駅前東地区の再開発ビル。小倉伊勢丹/アイム
リバーウォーク北九州 - 室町一丁目地区の大型複合施設

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