2007年04月12日更新
イオンモール直方(八幡西区星ヶ丘側)
モール1階 リリーコート(ユリの中庭)
モール1階 中央部
モール1階 チューリップコート(チューリップの中庭)
モール2階
1階 飲食店街
2階 ピクニックコート(セルフサービスの食堂)
2階 プラザ・カプコン(ゲームセンター)
2階 トーホーシネマ(複合映画館)
ジャスコ直方店 1階売り場
3階 駐車場
イオンモール直方(旧名、イオン直方ショッピングセンター)は、国道200号直方バイパス沿いに立地する大型複合商業施設。郊外型としては関門都市圏(筑豊含む)で最大規模を誇る。場所は星ヶ丘団地裏手の造成地。バイパス経由で来店する場合は、感田出入口から下の道路へ下りて、星ヶ丘側に回る。表玄関はそちら側にある。
施設はイオンモール(本社、千葉市)が手がけた1核1モール式の共同店舗で、ジャスコ直方店と約140の専門店で構成する。ジャスコとモールを挟んで対極の位置に複合映画館のトーホーシネマ、スポーツ用品のスポーツオーソリティがあり、施設構成としては教科書どおりの2核1モール式だ。飲食店街の規模が大きく、長時間の滞在を強く意識したつくりになっている。
商圏は自動車30分圏内の約36万人・約14万世帯。建物は50万商圏に対応する。イオンモール直方の強みは商圏内に手強い競合店が存在しないことで、希少な空白地帯に目をつけたイオンの集客に対する鼻息は荒い。自動車でしか寄り付けない場所に陣取りながら、自動車を利用できない層も取り込もうと最寄の鉄道駅となる筑豊電鉄感田駅まで送迎バスを走らせ、黒崎バスセンター行のバス路線も設けた。
イオンモール直方は初年度の売上目標として210億円を掲げた。小倉伊勢丹の初年度が約180億円余りだったことを思い返せば、北九州の商業がいかに郊外へ拡散したかが知れる。調査会社は「当社の計算では280億円近くまで伸ばせる超有望ショッピングセンター」と太鼓判を押し、客足は週末を中心に好調に推移する。
イオンモール直方は直方市感田東土地区画整理組合が造成した土地(湯野原)に進出した。元は林やブドウ畑が広がる丘陵地だった。施工地区は直方市の北東部に位置し、直方市役所より北東に約2.9km、筑豊電鉄感田駅より東に約1.5kmの距離にある。地区北側界は北九州市との境界線。面積34.8ha。
郊外型ショッピングセンターを懲らしめようという機運が全国的に高まっている。2007年に北九州市長に就任した北橋健治氏は「美しきコンパクトシティが目標」と公約集に書いた。しかし北九州地区ではこの10年、行政主導で都市の拡散・希薄化・解体が推進され、まちづくり三法の改正どこ吹く風かという印象だ。
長崎市は隣接する長与町にダイヤモンドシティが出店するのを阻止しようと長崎県を巻き込んで反対運動を繰り広げている。非県都の北九州市には広域行政の調整役がいない。福岡県が北九州市と中間市、北九州市と苅田町の合併を露骨に妨害したのは記憶に新しいが、福岡県は北九州市の境界線外側にあるブドウ畑に開発許可を出し、補助金をつけるような嫌がらせも平気でやってのける。
建物は小高い丘の上にあり、直方バイパス側が土手になる。この土地形状を巧みに利用して、まずはバイパスに沿って柱を下ろして半地下の駐車場を確保した。次に地下駐車場の天井高をもって人工地盤の平面を形成し、その上に2層(1~2階)のショッピングセンターと2層(3階~屋上)の駐車場を重ねた。
星ヶ丘から撮影した上の外観写真では高さは気にならないが、直方バイパス側からみると地下駐車場が露出している。小高い場所に立地することも相まって、4層の建物は相当に大きく見える。それが建物長388mにわたって横たわるのだから、初めて目の当たりにしたときは呆れた。ちなみに竣工当時日本一長い建物だったメイト黒崎(1979)でも長さは236mしかない。
大きすぎる施設は駐車場から売場までの歩く距離が伸びるため、都心ほどではないにしても敬遠される傾向がある。ここは売り場の上下左右が全部駐車場なのだから、巨大駐車場の中に売り場があるようなものだ。沿道の独立店舗を使い慣れたわたしのような無精者には敬遠したくなる図体だが、何度が利用すると使い勝手のよさに惚れ込む。
売り場は平明な構成だ。全長215mのモールは中央部が緩いS字形状で、空間の単調さを回避し、距離の長さを巧みに隠しつつ、見えない空間の広がりを探求するように買い物客を動機づける。1階の通路幅は8mあり、床には大理石調の光沢タイルを敷き詰め、ちょっと気取った街角の雰囲気だ。2階の床は絨毯を敷いて、対照的にくつろいだ室内の雰囲気を醸す。渡し廊下に案内所や露店などがあり、イオン八幡東(2006)よりも演出がうまい。
吹抜けの高さは18m。イオン若松(2002)のドーム型アーケードはビニールハウスかと見紛う質感で痛痛しかったが、こちらの天井は上質に仕上げた。ミラーガラスを採用したから、夜は内部の光が反射してきらきらしている。こういったきめ細やかなつくりこみはイオンモールならではだろう。サンリブシティ小倉(2005)ではこうはいかないし、同じイオンでもイオン九州が手がけたイオン若松は上記したような荒が目立つ。
1階の飲食店街はこのモールと平行する別の通路に主軸があり、モール側から脇道に入る動線で結ばれる。イオンモール直方は飲食店街が添え物ではなく、もう一つのモールとして存在感を示しているのが特徴だ。中央には広場があり、極彩色の中華料理店やイタリア料理店などが並ぶ様を眺めると、堺町公園界隈(小倉の歓楽街)の街角のようだ。開店後1ヶ月の来店者調査で飲食店街が特に好評だったというのも頷ける。
広場からエスカレータで2階に上がれば広広としたフードコート(セルフサービスの食堂)に出る。1階がフルサービス、2階がセルフサービスという棲み分けはショッピングセンターの常套ながら、ここは初訪問でもすぐに分かる動線計画が好印象だった。フードコートにゲームセンターが面しているのも適材適所だろう。
モールの両端は核店舗。トーホーシネマの位置には違和感がある。映画館はショッピングセンター内でもっとも客の滞在時間が長い場所であり、小腹が減ってなにか食べたくなる人が多い。アメリカのショッピングセンターは複合映画館の前にセルフサービスの食堂をつくる。理想を言えば、複合映画館はフードコートの横か、真上あたりに配置するのが望ましい。
イオンショッピングセンターでもっともつまらないのはジャスコだ。モールがますます魅力的に進化しているのに、肝心の核店舗が旧態依然のまま置き去りになっていないか。白色灯に照らされた白白した店内は見た目で魅力がない。商品展示にも工夫がない。品揃えは中途半端で食指が動かない。イオン最大の弱点がジャスコなのは、小売業者の皮を被った開発業者というイオンの実態を反映している。
イオンの実質的な創業者である岡田卓也の信条は、五代目・惣右衛門が遺した「大黒柱に車をつけよ」だった。土地に縛られない。しがらみのない場所に出かけていって店を構え、客足が遠のいたら店を畳んで別の場所へ移る。それを「狐や狸が出る場所に出店する」と表現した。
イオンを行商人や縁日商人の末裔が築いたビジネスモデルと考えると、イオンショッピングセンターなるものに得心がゆく。縁日物とは粗悪品の例えだが、そんなものにうっかり手を出すのは雰囲気に呑まれて気が大きくなるからだ。イオンはまちづくりではない。ハコは非日常を演出する仮設の興行場であり、その中では期間30年にわたる壮大な行商が行われている。
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