2008年10月25日更新
ターミナル前の有料駐車場から見た旅客ターミナル
新北九州空港は、2006年3月16日に開港した海上の24時間空港。これに伴い、曽根の北九州空港は廃止された。新空港は「小さく産んで大きく育て、西日本の主要空港として発展させる」が基本思想。開港時は初期投資を極力抑え、利用料を低く抑えて競争力強化を図る。
旅客ターミナルビルは、中央部の玄関ホールと出発ロビーを中心に、北側に国内線施設、南側に国際線施設を配置。1階が到着階、2階が出発階、3階は展望デッキや飲食施設。南北約110m、東西約45m(中央部約67m)。外観は北九州の山並みと躍動感ある海の輪郭を主題とする。
旅客需要予測は、初年度が約150万人、2017年度が約350万人。旅客ターミナルは将来の需要増大を見込んで拡張の容易性に配慮した設計になっている。建物は24m四方の単位(ユニット)に分割され、これを縦横に格子状に組み合わせることで建物全体を構成する。竣工時は縦2×横5個の組み合わせだ。
建物の分割・部品化はプレハブ住宅と同じだが、全体に大屋根を被せては拡張できなくなる。そこで、単位一つ一つに天窓付きのピラミッド屋根を付属させ、屋根も単位完結型にした。これなら増床して屋根をかけ替える必要はないし、増築部分がつぎはぎになることもない。
単位はそれぞれが一つの小建築として完結し、他の単位とは構造上の補完関係がない。鉄骨造だから、壁は建物の構造耐力とは関係がない。よって、増築する場合は新たな単位を既存の単位の横に建設し、接する部分の壁を取り払えばよい。
もっとも、建物は自在に拡張できても、内部の設備構成を変えることは想定していない。この旅客ターミナルは延床面積2万5000㎡として設計し、当面はその広さが必要ないから開港時は延床面積約1万4731㎡分を建設するということだ。
大きな建物が着工した後になんらかの事情により規模縮小することがあるが、この場合は建物の一部が欠損した状態になる。拡張性に配慮した新北旅客ターミナルの場合は、全体を建設しなくても欠損はなく完成品の状態だ。将来拡張しなくてもなんら問題ない。この意味で、この旅客ターミナルは暗い予測に基づいた提案だった。
「小さく産んで大きく育てる」という売り文句はなかなか優秀だ。公共事業への批判が高まる中で、賢明な判断を下したように受け取れる。が、実際はそうではない。
新北九州空港の旅客ターミナル案が提言されたのは2002年。この年は新空港の基本仕様が決まる勝負の年だった。北九州政財界は新北九州空港に3000m滑走路を整備し、24時間稼動の西日本国際空港を開港させるという野望を暖めていたが、それをよく思わない勢力があった。福岡の政財界だ。
2002年1月、福岡県は新福岡空港構想骨子案を出し抜けに発表した。この構想はだれの目にも拙さが見て取れる内容だったが、整備が最終段階に入った新北九州空港をけん制する材料としては十分だった。新福岡空港構想によって「北部九州3空港の連携」という新機軸が打ち出され、「西日本国際空港」は雲散霧消して「福岡空港の代替空港」に格下げされた。
さらに福岡県は、新福岡空港の調査と新北九州空港の滑走路延長を同時に国に要求することはできないとして、新北九州空港の3000m滑走路を断念させた。これに呼応するように九州地方整備局が新北九州空港の旅客需要予測を従来の580万人から328万人(約45%減)へ劇的に下方修正した。修正は妥当と言えるが、新空港建設を推進する立場の同整備局が、勝負の年に下方修正したことには意図を感ずる。同整備局は新福岡空港の旅客需要予測では旧来の大風呂敷を広げた。
この結果、新北九州空港の旅客ターミナルは延床面積1万3500㎡という驚くべき貧弱な規模に縮小せざるをえなくなった。「小さく産んで大きく育てる」は、北九州陣営の最後の砦、北九州市港湾空港局の抵抗の産物だった。
新北九州空港の旅客ターミナルは必要最低限の広さしか確保できなかった。基本設計では国内線施設は国内大手2社(日本航空、全日空)が窓口を置くことしか想定しておらず、その後に参入が決まったスターフライヤーを入居させるのは無理があった。よって、着工する前から増築計画が実現して、建物北側に延床面積1231㎡の平屋を継ぎ足し、ボーディングブリッジも増設した。
旅客ターミナルの拡張の容易性とは、建築計画の章で述べたように既存の建物を改築することなく増築できるということであり、参入表明があればすぐに床を用意できるということではない。スカイマークが旅客ターミナルの容量不足を理由に就航を断念したのは記憶に新しい。
1500台収容の有料駐車場も気がかりだ。空港当事者は1日390円の駐車料金は安いと謳うが、山口宇部空港の駐車場は無料だ。大都市圏にある名古屋空港の駐車場も1週間無料だ。空港の種別が異なるからどうだこうだという御託は聞きたくない。そのような事情を空港利用者は知らないし、知ったとしても考慮しない。
駐車場の容量も小さすぎるのではないか。1500台は1年365日毎日全台が入れ替わったと仮定しても、年間収容数は55万台弱にしかならない。これは年間旅客数に換算して100万人の需要に応えるためのものだろう。新北九州空港は旅客ターミナルだけでなく、アクセスの面でも年間旅客数150万人が天井になる。
新北九州空港は郊外ショッピングセンターのような空港だ。自家用車でアクセスできることが新空港の最大の強みであり、福岡空港と差別化する手段でもある。福岡空港の土俵にまんまと上って、「引野口からバスで新北九州空港へは40分、福岡空港へは56分」などと言い争うようでは勝てる勝負にも勝てなくなる。10分の争いには、胸を躍らせる新しい提案がなにもない。
1日に数百本のバスと電車が発着する黒崎駅前はさんざんな状態だが、自家用車以外にアクセス手段のないイオンモール直方は大盛況だ。筑豊を含む関門都市圏全域は自動車社会であり、かれらから車を取り上げてバスや電車に乗せかえる必要はない。自家用車の利便性を訴えれば支持される。バスがない電車がないと泣き言を言って守勢にまわるのではなく、駐車場を無料開放して大攻勢をかけるべきではないか。
飯塚市民に尋ねるとよい。「あなたは自宅から重い荷物を抱えてバスと電車を乗り継ぎ、2時間もかけて福岡空港へ行くことを選ぶのか、それとも自宅かららくらく自家用車に乗り込んで1時間で到着する新北九州空港を選ぶのか」と。新北九州空港は福岡空港の後背地を大きく侵食できるはずだ。
あるいはこんな比較広告を作ったらどうか。夫婦と子供2人が海外旅行へ行く道すがらだ。一方では、それぞれが重い荷物を抱えて、駅の乗り場で疲れた面持ちで電車を待っている。子供は座り込んでしまっている。もう一方では、家族4人が自家用車で楽しそうに一家団欒ドライブしながら新北連絡橋を渡っている。
先日の衆議院選挙で小泉首相は「改革に賛成か、反対か」と国民に二者選択を迫り、歴史的な大勝利を収めた。巧妙な二者選択とイメージ戦略、そして価値観の大転換が必要だ。開港までの時間はもうあまり残されていない。福岡空港が便利だという古い刷り込みに打ち勝つには、物議をかもすほどの大胆な広告を打って、新しい時代の新しい空港のあり方を提案してほしい。
2005年11月1日作成
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New Kitakyûsyû (Kitakyushu) Airport Passenger Terminal