2010年11月2日更新
ドリームシップ(事業名、細江町三丁目地区社会教育複合施設)は、下関市生涯学習プラザと下関市立図書館で構成する複合公益施設。細江町の国道9号と旧駅前通りが交差する場所に立地する。南隣に辰野葛西事務所設計の旧山陽ホテル、東の道路向かいに原弘産本社ビルがあり、下関都心の中でも最上級の立地だ。
内部は1~3階が生涯学習プラザで、「海のホール」(シューボックス形式、客席数805)、「風のホール」(音楽専用、客席数204)、「宙のホール」(多目的、平土間)ほか、会議室、レクリエーション室、料理教室、喫茶店などがある。4~6階は50万冊収容の中央図書館で、4階が児童用書架中心の図書館、5階が一般用書架中心の図書館、6階が全自動式の閉架書庫。地階は80台収容の自走式駐車場。
低層にホール、上層に図書館を配置したのは、前者は利便性と避難の安全性、後者は静粛性を確保するためだという。
山の手の上山田町にあった下関図書館、および建設地にあった中央公民館、下関市文化会館、下関市婦人会館は、建設から30~50年が経過し、更新の時期を迎えていた。新施設はこれらを一つの建物に集めた上で、中央図書館と生涯学習施設に再編した。「より質の高い公共サービスの提供と利便性の向上を図るとともに、市民と行政のシンボル的施設になることを目指した」という。
事業推進にあたっては公設民営方式(DBO方式、より広義ではPPP方式)を採用した。選定事業者は特別目的会社(SPC)を設立し、旧施設の解体撤去、新施設の設計・建設を行い、開業から5年間にわたって運営と維持管理の全てを担い、利用者に公共サービスを提供する。運営委託料は年間利用者数の増減に連動する仕組みだ。
よく耳にする民間活力導入方式(PFI方式)との違いは、公共が資金調達を負担し、事業化を民間に委託する方式であること。PFI方式で推進したひびきコンテナターミナルのように選定事業者が契約後に変調をきたし、出資を渋り契約を履行せず、事業が頓挫するリスクを回避できる。一方、金はお上が出すため、悪しき公共事業に付き物の無駄遣いを排除できない。
入札には三菱商事(本社、東京都)と原弘産PFIインベストメント(本社、東京都)の共同事業体が参加し、三菱商事らが落札した。しかし三菱商事らは構成員が別件で不祥事を起こして失格となり、下関市は次点の原弘産らと契約交渉する意向を示した。ここまではなんでもないが、近藤栄次郎・下関市議(共産)が三度やり直された採点の内幕を暴露して、官民癒着の疑惑が生じた。
下関市では長府博物館に代わる新博物館をPFI方式で建設する提案が2005年に市議会で否決された。事業費101億円の大型事業に1事業者しか応募せず、手続きの不透明性が批判を浴びた結果だった。市民の監視が厳しいにもかかわらず、続けざまに談合や癒着の疑義がかけられたことにより、問題の根が深いことを印象づけた。
原弘産はこの問題を訴訟に持ち込んだが、その頃から米国サブプライムローン問題の煽りを食って社業が傾ぎ、訴訟に金と時間を割けなくなった。同社は訴訟を取り下げ、約1年後に行われた再入札には合人社計画研究所(本社、広島市)の共同事業体のみが参加、一度目と同じ手続きを形式的に経て選定事業者となった。結局、この事業には競争原理が働かなかった。
外観デザインは、沿道や臨海の豊かな自然環境にとけ込むように白いタイルとガラス壁面で構成し、関門海峡を進む客船をモチーフとしています。また、建物の基本高さを抑えて、街区のスカイラインを揃え、まちの景観にとけ込んでいます。さらに海や空の青さを軽やかにつなげていく水平ラインや、機能別に多様な表情を持たせた壁面により、メインファサードをつくり出します。(公式ホムペ)
建物は対岸の門司港にある海峡ドラマシップ(2003)よりは船らしい格好をしている。東側(旧駅前通り側)が船首、西側が船尾で、国道9号に横腹を向ける。東側5階の窓を後退させた部分が艦橋、西側屋上の塔屋が煙突か。豪華公共施設ならではの存在感がありながら、周囲の建築と高さを揃えて街並み調和も図った優等生だ。しかし、新鮮味がどこにも感ぜられない。
公共施設のガラス好きはなんとかならないのか。ガラス張りは寒冷地では冬場に日射熱を取り込む効果があるが、亜熱帯の関門都市圏では夏場の冷房効率を高めるためにも開口部は小さいほうがいい。分厚い壁にするのが一番だ。どうせ夏場になれば白い幕で目張りして開放感はない。ガラスにすると、内部の壁際を有効利用できず、備品配置に制約が生じるなど、デメリットが多い。
アシスト21(1999)は、ガラス張りにバルコニーの庇効果と格子の日除け効果を付加して夏に備えたが、みなぎる日差しの前には無力だった。海峡ドラマシップは南側を大壁面で処理して北側だけをガラス張りにしたが、西日の当たる夕方は辛いようだ。ドリームシップは海峡ドラマシップと同じ構成。海峡ドラマシップと異なり密集市街地に立地するため、直射日光の影響はさほどないにしても、やはり感心はしない。
ガラス張りの公共施設がはびこるのは、設計者が冒険せず役所好みにおもねた提案を行うことに原因がある。入札が1事業者ならなおさら手堅い提案しか出ない。こういうマンネリを回避するためにも、入札のハードルを極力低くして、多数が参加できるようにしたほうがいい。設計と建設を分けるのも一案だろう。全部を1事業者に丸投げする公設民営方式がよいとは思わない。
一方、ドリームシップの立地には下関都心の行く末を感じた。これからの時代、商業中心の都心開発は難しい。場末の遊休地や埋立地ではなく、ビジネス街の一等地に市民が集える場所ができた意義は大きい。
2010年8月31日作成
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Dreamship (Simonoseki City Lifelong Learning Plaza & Simonoseki City Central Library)