2011年2月11日更新
東横イン小倉駅北口(小倉駅北口Kビル)は、山忠(本社、愛知県大治町)が所有するビジネスホテル。東横インが30年契約で一括賃借した。地主に土地と建物を用意させて一括賃借するのを建借方式といい、東横インやルートインなどのビジネスホテルチェーンに共通する事業手法だ。小倉駅北口の東側、旧国道199号沿いのうなぎの寝床に立地する。敷地の裏は一方通行の区画道路を挟んで鉄道線が塞ぐ。
東横インは2007年2月に小倉駅南口店(施主、愛媛汽船)を出店しており、小倉駅北口店は小倉出店の2号店になる。同じビジネスホテルチェーンが同一地区に複数出店するのは北九州ではこれが初めてだろう。新北九州空港の開港以前は博多に宿泊して北九州に日帰り出張するのが主流だったことを思うと隔世の感がある。直近5年間の北九州地区のビジネスホテルの増殖ぶりは常軌を逸していた。
東横インは同じ意匠の建物を全国各地に増殖させる事業者だから、敷地形状さえ見ればどんな建物が建つかは見当がつく。正直、わざわざ見学に出かけるまでもない。建物自体は上質で落ち着いた雰囲気があり、控えめな色合いと相まって景観の向上に寄与する。小倉北口の場末に東横インは似合わないが、小倉駅北口店が開業すれば街の雰囲気を引き上げてくれると期待していた。
小倉駅北口店は地上10階の羊羹形、中廊下式で玄関は北側の妻にあり、東西に137の客室を配す。小倉駅南口店を一回り小さくした感じかと思い描いて、この建物を最初に見たときは目を疑った。なんだこのタワー式駐車場は! なんでこんなのが表玄関の真正面を塞いでそそり立っている! もう訳が分からない。東横インの建物でこんなひどいのが建つとは夢にも思わなかった。
しばらく茫然自失したあと我に返り、なぜこんな建て方をしたのか考えてみるが、どうにも得心できない。下関駅東口店、小倉駅南口店、小倉駅北口店を比較した場合、タワー式駐車場まわりの処理がいちばん上出来なのは下関駅東口店だ。
下関駅東口店はL字形の建物で、正面部分のピロティを抜けた中庭にタワー式駐車場を配した。正面はホテル棟の化粧壁であり、安普請の駐車場設備が表通りからはいっさい窺えない。美観上はこれが理想形だ。ただ、こうなったのは美観に配慮したからではなく、敷地形状に従ったからだろう。この敷地は表通りに面した部分は幅があるが、奥の幅が狭い。ホテル棟も奥は片廊下式になっている。
小倉駅南口店は羊羹形の建物の東側奥の側面をやや凹ませてタワー式駐車場を設置した。自動車は建物東側の狭い誘導路を通って駐車場へ入る。敷地に建物を建ててなお車1台が通行できる幅がある場合は、この配置が妥当だろう。駐車場設備を奥に引っ込めないで表に設置した場合は、複数台が入庫するときに後続車が公道上で待つことになり、好ましくない。
小倉駅北口店は敷地の幅が極端に狭い。右写真下のうなぎの寝床がそれ。建物で敷地の幅を使い切り、小倉駅南口店のように横に駐車場設備を配置できない。では、表裏をひっくり返して区画道路側に駐車場を設置すればよいのではないか。車を裏手の区画道路へ迂回させ、客を勝手口から迎えろと言うのは普段の主張とはあべこべで心苦しいが、いくらなんでもこれはない。
そもそもホテルの表玄関を台無しにしてまでタワー式駐車場を設置する必要があったのか。スーパーホテル小倉駅南口はアーケード立地ということもあり、最寄の民間駐車場と提携して専用駐車場を設けていない。東横イン小倉駅北口も裏に付置義務制度分を最低限確保して、東隣にあるエクセニシムラパーキングと提携すればよかった。西隣にはトヨタ・レンタリースもある。自前の駐車場はもっと軽んじてよかった。
このままの配置で建物のファサードを見目秀麗に仕上げるのなら、タワー式駐車場をホテル棟に糊付けにし、化粧壁だけを拡張して取り込んでしまうしかない。しかし、そうはしなかった。結局のところ、醜い立体駐車場とレンタカー屋に挟まれた冴えない立地が、やっつけ仕事を呼び込んだとしか思えない。こんな場末でコストをかけたくない。見た目なんてどうでもよいではないか。
わたしがカメラと三脚をぶら下げてホテル前で正気を失っていたら、傍を何人ものアジア系外国人がすり抜けてホテルへ入っていった。北口で国際会議が催されていたのだろう。外国人客はこのホテルの構えを見てどう感じたろう。初見でがっくり場末の宿だと落胆するも、入って新築にびっくりして好悪の印象が相殺されたろうか。
2009年3月10日作成、2011年2月11日更新
©2011 ガゾーン 転載自由。著作権は関門通信またはその情報提供者に属します。
Tôyoko Inn Kokura-eki Kitaguti (Business Hotel)