2006年10月26日更新
玄関上に岩田商店と掲げるが、右手には岩田酒店と書いてある。酒屋ということで、見出しは後者に与した。
建物は国道2号東本町2丁目交差点の北西角にある。関門国道トンネル手前だから、目にしたことのある方は多かろう。わたしも「あそこに旧岩田酒店が」と思いつつ、気ぜわしい場所だからいつも素通りしてじっくり見物したことがなかった。近寄って見物したのは今回が初めてだった。
旧岩田酒店は入母屋造りの和風建築が基本形。密集地対応で西側は切妻にしてすっぱり切り落とす。目立つのは隣家側に設けた煉瓦の耐火壁。建物の形状からして西側(写真1枚目)が竣工当時からのものだろう。この街区では1932年と1945年(門司大空襲)に火災があり、耐火壁を北側にも拡張(3枚目写真)して、建物を街区から完全に隔離した。
耐火壁は増築の痕跡がくっきり残る興味深い代物だ。詳しいことは知らないが、「向かいのあさひ座が火事になったとき、漆喰壁と鉄製のむしこ窓によって延焼を免れた」(JMRA九州)という記載から推察して、火は竣工当時の耐火壁を越える勢いだったろう。従って、耐火壁の増築では北側に新たに壁を設けたほか、既存の耐火壁もさらに上へ積み増した。
こんな大仰な壁を拵えてまで守ってきた建物は、遠目には単に汚らしい建物に見える。しか鼠漆喰は間近で眺めると惚れ惚れする渋さだ。つやつやてらてらぴかぴかしたのはいいかげん食傷した。最近は世界的に和風が流行る傾向があるが、つや消しの焼き物みたいな建築ができれば、きっと世界的な注目を浴びるだろう。
岩田家住宅は2006年7月20日に北九州市指定文化財になった。対象は主屋、土蔵、宅地。「戦災の被害が甚大であった門司港地区に残された数少ない町家建築」と北九州市は指定理由を説明している。個人住宅としては市内で初めての指定という。
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