2006年06月24日更新
敬止館は、三菱化学黒崎事業所の武道場。三菱は創業以来、武道をもって社員教育の一助としてきた。道場は社員の利用に限らず、広く地域社会に開放する。
建物は1944年に九州専門学校(現在の九州国際大学)の道場として竣工した。当時は高見神社の上にあったそうだ。九州専門学校は短命の学校で、戸畑専門学校、八幡専門学校を経て1950年に八幡大学になった。敬止館はこの過程で放置され、1955年に三菱化成黒崎工場(当時)が譲り受けて本事務所前に移築した。
道場名は建物の移築に尽力した柴田周吉・黒崎工場長が命名した。「詩経」にある語句「夙夜敬止」に由来する。意味は「朝な夜な敬う」。玄関の扁額は柴田氏の直筆。道場内の扁額「寂然不動」は、三菱道場に掲げてあった岩崎小弥太の書。
高見で竣工した道場と知ったときは、なるほどと思った。建物は工場敷地内にあっては異彩を放つ。写真ではうまく表現できなかったが、入母屋妻入りの玄関はおごそかだ。森の中であれば引き立ったろう。後から取り付けた雨どいはやっつけ仕事だ。建物の魅力を大きく損なっている。
しかしそれよりも気になるのは反り屋根の状態で、自らの重みでひどく陥没した。建築物は屋根の形式をもって建物の形式とするくらいに屋根が重要だ。道場のような大建築では屋根が自重で潰れないようにさまざまな工夫を凝らす。この屋根の潰れ方はいただけない。棟梁の匠を疑うが、竣工時期から察して戦争末期の物資欠乏が原因なのかもしれない。
敬止館はこのままでは次の10年を生き残れそうにない。屋根組に欠陥があるのなら改修は難しかろう。不可能でないとしても、新築するほうがはるかに安上がりで済む。三菱化学はこの建物をどうするつもりなのだろうか。
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