ガゾーン関門都市圏

2008年10月5日更新

門司区役所

設計・施工
倉田謙(設計)、大林組(施工)
竣工・規模等
1930年竣工、RC、地上3階、建築面積1854㎡、事業費50万円
場所
北九州市門司区清滝1-1-1
画像

門司区役所 2008年4月

あらまし

門司区役所は、「西部」の中枢拠点として繁栄を謳歌した旧門司市が1930年に門司市役所として建設した庁舎。1963年の北九州市発足により門司区役所となる。北九州市内では2007年に戸畑区役所が戸畑C街区の新庁舎へ移転し、戦前の庁舎で現役なのは門司区役所だけになった。

門司港の中心からやや南に離れた国道3号沿いの風師山中腹に立地し、ここからは関門海峡や下関旧市街が見晴らせる。山の中腹といえば誤解を招きそうだが、門司港は平坦地に乏しく、ここ清滝はかつて官公庁街だった。現在でも門司税務署や門司掖済会病院などがあり、戦前は新聞社や鉄道本社なども沿道に軒を連ねた。

建造物

建物は20世紀前半の国際様式に与したという。同年竣工の九州大学工学部本館と同じ意匠だから、地域性や用途を超えた汎用設計という意味ではなるほど国際様式だ。同じ年に別の場所で同じ意匠の建物を建て、一方では茶色のタイルを張り詰めることで学問の権威を、一方ではクリーム色に塗ることで港町らしい軽快さを表現した。

門司区役所は全体としては国際様式=脱装飾というより、様式建築を機能的に仕立てた感じだ。中央に塔屋を立てて左右対称に処理するのは戦前の官公庁舎の定番。旧戸畑区役所も基本的には同じ形だ。半円状に迫り出す玄関ポーチや、胸壁(パラペット)の縞模様、建物隅を丸めて窓を穿つ処理などは、アールデコの影響が感ぜられる。

玄関から内部へ足を踏み入れると、九大と門司区役所で方向性に大差はない。会議室の框式扉や、その他の扉の欄間にはステンドグラスがはめ込まれ、さりげなく豪華で装飾的だ。照明器具や階段、売店などにはレトロな雰囲気が漂う。竣工当時は「全国にも誇るべきモダンな庁舎」と報ぜられた。1999年に国登録文化財に指定された。

吉崎祥氏は「明治以来輸入されていた西洋建築は、様式混合のいわゆる折衷主義であり、(中略)様式のみの影響を受け、その根本にある思想をみることはなかった」(北九州の近代化遺産)という。この時期の洋風建築にはこの説明がしっくりする。大正時代になって日本でも分離派が台頭したが、倉田謙は新時代の申し子ではあるまい。

2008年4月17日作成

資料

参照記事(外部サイト)
門司区役所 - 文化遺産オンライン
関連項目(ガゾーン内)
旧門司三井倶楽部 - 門司港駅前へ移築したペンション。国重要文化財。
JR門司港駅 - 旧「門司駅」。鉄道駅としては唯一の国重要文化財。
旧大阪商船 - 門司港の美貌。往時は大陸航路の待合室。国登録文化財。
九州鉄道記念館 - 旧九州鉄道本社を再利用。切妻の簡素な営舎風。
旧戸畑区役所 - 国威掲揚に傾いた戦前の庁舎。スクラッチタイル張り

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