2006年05月24日更新
安川電機本社は、黒崎北口の同社本社工場の入口付近にあるアントニン・レーモンド設計の建物。レーモンドはチェコ出身の建築家。アメリカのフランク・ロイド・ライト事務所で研鑚を積み、東京の帝国ホテル建設の折に来日、そのまま日本に留まってモダニズム建築の作品を多く残した。
安川の本社は往時のハイテクビル。外壁には硬練りコンクリートを採用して振動打ちした。後の高度成長期に竣工した建物は安かろう悪かろうの軟練りコンクリートだから、すぐに表面がひび割れて建物自体も20年か30年で寿命尽きる。わが国の建物の30年償却サイクルは軟練りコンクリートの産物だった。
この建物は竣工から53年が経過したが、コンクリートはあと100年くらいはビクともしそうにない。しかし黒崎バイパスの予定地にかかるということで、建物の左側がさっくり切り取られた(写真2)。一部を切り取ったためバランスがおかしいが、レーモンドのデザインを損なわないように復元したのはよかった。
丈夫で長持ちなだけでなく、内部には米国製吸音材を使用するなど、技術水準の高い建物だった。現在の用途は分からないが、本社機能は敷地内の別の建物にあって、ここは来客施設のように見える。
この年代の建物は学術的に保存が図られるほどの価値は生じていない。かといって取り壊すのでは戦後復興期の建築文化が失われてしまう。新日鐵はレーモンド設計の大谷体育館をあっさり取り壊した。安川は必要最小限だけを切り取って残したのだから、建築文化のよき理解者だったと言えよう。
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