2010年3月9日更新
凹んだ部分に設けられた玄関部
向かって左翼を道路建設のため切除
安川電機本社は、黒崎駅北口の同社本社工場の正門付近にあるアントニン・レーモンド設計の事務所建築。レーモンドはチェコ出身の建築家。アメリカのフランク・ロイド・ライト事務所で研鑚を積み、東京の帝国ホテル建設の折に来日、そのまま日本に留まってモダニズム建築の作品を数多く残した。
高度成長期は安かろう悪かろうの軟練りコンクリートを採用した建物が非常に多い。軟練りコンクリートは耐久性がなく、すぐに表面がひび割れて、建物自体も20~30年で寿命尽きる。わが国の建物の30年償却サイクルは軟練りコンクリートの産物だった。一方、安川本社は硬練りコンクリートを振動打ちし、当時としては異例の堅牢さを誇る。
この建物は築53年になるが、コンクリートは次の半世紀くらいはビクともしそうにない。しかし黒崎バイパスの予定地にかかるということで、建物の左側がさっくり切り取られた(写真2)。一部を切り取ったためバランスがおかしいが、レーモンドのデザインを損なわないように復元したのはよかった。
丈夫で長持ちなだけでなく、内部には米国製吸音材を使用するなど、技術水準も高い。安川は現在もこの建物を本社として利用する。
この年代の建物は学術的に保存が図られるほどの価値は生じていない。かといって取り壊すのでは戦後復興期の建築文化が失われてしまう。新日鐵はレーモンド設計の大谷体育館をあっさり取り壊した。安川は必要最小限を切り取って建物を残したのだから、建築文化のよき理解者と言えよう。
2006年5月24日作成
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