2006年2月12日更新
2004年1月20日から25日にかけて寒波が襲来した。北九州では寒波が居座ることは少なく、1週間にわたって雪が降りしきるのは近年ではめずらしかったという。
わたしは積雪には慣れたものだ。重い外套に身をくるみ、黒ずんだ雪道をとぼとぼ歩いて学校へ通った日日を思い出す。あの頃は南の国に憧れた。惨めな記憶もいまは懐かしい。
写真は1月21日深夜の撮影。気温は氷点下8度。平尾台自然の郷周辺では膝上まで雪が吹き溜まって歩くことすらままならなかったが、風渡る道路上は雪が流されて深くはない。
わたしが平尾台に到着したときは、夜空に冬の星座がきらめいて、風が吹くと砂塵のように地表の雪が舞い上がる状態だった。そののち天候は急変して、数メートル先も見えない吹雪になった。
集落の中央駐車場前にある商店横から平尾台自然観察センター通用門。積雪は10cm~20cm。粉末状の雪(パウダースノー)だから、踏み込んで濡れるということはない。氷点下では砂と同じで、手ですくえば指の隙間から流れ落ちる。平尾台集落は小さな盆地であり、ここは穏やかな印象だった。
目的地は自動車で行ける平尾台のもっとも奥地、平尾台無線中継所だった。しかし吹雪に阻まれて前が見えない。中峠へ登る坂道を半ば進んだところで折り返した。
タイヤチェーンを装着していても滑って坂道を登れなかった。中継所行きの平尾台支線林道は一般車両の通行を拒むため、わざと路面に切込みをいれ、がけ崩れの後のような凹凸の大きい未舗装路にしてある。タイヤを虚しく空回りさせてふと気づいた。もしや岩場でタイヤを滑らせているのではないか。チェーンが擦り切れる恐れがある。それが気がかりだった。
進んだ道を戻ってきて見晴台へ。時折吹雪でホワイトアウトする。雪がさらさら流れてゆく。
21日の夜だから本格的な積雪が始まる前の状態だ。見晴台は海抜でいえば400mほどしかないが、市街地と比較すると積雪量が段違いに多い。低く垂れ込めた雪雲は平尾台の西壁で堰き止められ、厚みを増して一気に高空へ吹き上げる。そのときに大粒の雪を落とす。
行しなは確かに道路があったはずが、帰しなは路面が見当たらない。あいだ40分で車輪跡が消されて雪の原になった。風は路上の雪を吹き飛ばしてくれる。しかし風よりも雪の力が優勢になると、こういう意地悪な結果になる。
眠くなったので帰ろう。平尾台道路(県道28号)をあべこべの行橋方面へ下りて行った。苅田採銅所線でタイヤをパンクさせ、香春町の国道322号に辿りついたところで走行を断念した。ここで予備のタイヤに履き替えることにした。パンクするのは仕方ないとして、なぜ今晩でなければならなかったのだとタイヤを叱責したものだ。工具を無造作に放り出しておいたら、たちまち雪が降り積もってどこにあるのか分からなくなる。
作業を終えて雪で手を洗うころには十分に目が冴えた。平尾台の麓には猿田彦神社がある。うとうとあらぬ方向へ進んでゆくわたしを道案内の神が気遣ってくださったのだろう。
撮影 2004年1月21日 | 作成 2004年1月29日
Hiraodai at Winter Night