ガゾーン関門北九州圏

2005年12月25日更新

門司港レトロ

用途地域等
商業地域、建ぺい率80%、容積率400%、防火地域また準防火地域、一部は臨港地区
現況
懐古志向の都市型観光地
場所
北九州市門司区港町、東港町周辺
画像

あらまし

門司港レトロは、門司港の第一船溜を中心とした都市型観光地。門司港はかつては西日本の中枢拠点であり、大陸植民地への玄関だった。帝国時代の明治・大正期に洋風建築が多数築かれ、門司港のハイカラぶりは東京・銀座を凌ぐと言われた。

第二次世界大戦により建物の大部分は消失したが、戦火を免れたものはそのまま現在まで残った。古い建物が生き残ったのは、北九州市の都心が門司港から小倉へ移動して、この地区の開発が不活性化したからだ。しかし歴史的建造物を観光資源にした振興により町の魅力が高まった結果、開発の波が押し寄せて歴史的建造物が撤去される皮肉な現象が生じた。

門司港レトロ事業(第一期)

門司港の観光開発は、1988年に門司港駅の駅舎が鉄道駅としては初めて国重要文化財に指定されたことに始まる。大正建物の商品性に気づいた北九州市や地元関係者らは、次に山の手の谷町にあった旧門司三井倶楽部(門鉄会館)に目をつけた。建物は1987年の国鉄分割・民営化により国鉄精算事業団に所有が移り、解体して土地を売却する予定だった。

北九州市は1987年に自治省が打ち出した「ふるさとづくり特別対策事業」を活用し、「門司港レトロめぐり、海峡めぐり推進事業」(1988-1994)を作成した。これが門司港レトロ事業の正式な始まりだ。旧門司三井倶楽部の文化的価値を評価した文化庁も協力を惜しまず、この建物を1990年に国重要文化財に指定した。

旧門司三井倶楽部は門司港駅前に移築され、同じく解体の危機にあった旧大阪商船(国登録文化財)も買収して修復した。移転先にあった古い時代の業務ビルは解体撤去して、清滝で新たに建設したポートモジ壱番館に店子を収容した。

こののち社会資本の整備にも乗り出した。レトロめぐり事業として、レトロプロムナードの整備と電線地中化を行った。海峡めぐり事業として、めかり回遊路と展望台を整備した。観光施設等整備事業として、歴史的建造物の前に案内板を設置し、門司港駅前レトロ広場を整備した。港湾緑地、門司港第一船だまりの親水護岸広場、ブルーウイングもじ(跳ね橋)、門司港駅周辺の通過交通量を緩和するバイパス(清滝―西海岸)も建設した。

観光客が順調に増加し、国重要文化財二つに国登録文化財一つでは足りないということで、損壊して廃墟同然だった旧門司税関を買収し、いったん解体して再建しなおした。北九州市の友好都市・大連にある歴史的建造物(国際友好記念図書館)の移転を企てたが、他の都市から文化財を奪うのはまずいということで複製した。

門司港レトロ事業(第二期)

第2期事業(1997-)では公共部門だけでなく民間部門も参入し、事業は欲に目が眩んでまちづくりというよりはテーパマークづくりへと変貌し始めた。

民間部門では念願の滞在施設として門司港ホテルが開業した。観光客が金を落とす施設も必要だということで、観光物産館 港ハウス、複合商業施設 海峡プラザが竣工した。門司港発祥の出光興産は出光美術館門司分館を設置した。門司港レトロの中心地には不本意ながら超高層分譲マンションの門司港レトロハイマートもできた。

公共部門では、門司港レトロハイマートの最上階に「門司港レトロ展望室」を設置し、この場所にあった赤煉瓦倉庫を偲んで「門司港レトロ駐車場」を整備した。夜間も楽しめるまちづくりを目指して「門司港レトロナイトファンタジー」を始めた。「しおかぜの路」(遊歩道)を整備し、100億円を投じて観光客向けの豪華展示施設 海峡ドラマシップを建設した。

清滝にある旧九州鉄道本社はJR九州の協力を取り付け、煉瓦にシリコンをぶち込んで補強、九州鉄道記念館に改装した。JR九州が撤去して駐車場にする方針を示した旧三井物産門司支店(JR九州第一庁舎)も先ごろ北九州市が取得することで合意した。駅前の情報発信拠点に仕立て直すという。

本物のレトロ

門司港レトロ事業は歴史的建造物の保存が建前だが、実際は大正レトロな新築観光地づくりだ。この事業によって門司港駅前は様変わりした。衰えても西日本の中枢拠点として風格があった門司港駅前は、古い時代の業務集積が退場を命ぜられ、歴史不在の大正建物展示場と化した。

門司港の近代建築は旧市街の国道3号沿いに集積の中心がある。本物のレトロが見たければ、第一船溜ではなく国道3号沿いをさまようのがよい。しかし旧市街は観光客が立ち寄らない。門司港レトロは歴史的建造物と関門海峡の眺望が観光資源の両輪であり、海が望めない市街地は魅力が半減するからだ。

片輪の歴史的建造物にしても、旧市街には装飾性に富んだ分かりやすいレトロが少ない。残念ながら、機能主義や分離派は一般観光客の目には単に古ぼけた建物にしか見えない。空き家になり、解体撤去される建物は後を絶たない。本物のレトロは危機的な状態にある。

個人的には100億突っ込んで埋立地にガラス張りの当世風展示施設を造る金があるのなら、空き家になった国道沿いのレトロを買収してそれぞれを展示施設の分館にし、観光客に建物の魅力を「啓蒙」しつつ、町を回遊する仕組みを考えたほうがよかったと思う。旧市街に恩恵がある形での観光開発なら、しらけムードで傍観する地元商業者らも自らの生活をかけて知恵を絞る。

門司港は大都市の財政力に物を言わせた土建開発からいつまでも脱却できないのが気がかりだ。最初の提案としてはよかった。しかし土建開発は悪い意味で全国区のマーケティングが幅を利かせ、長く続ければ陳腐化が避けられない。レトロテーマパークは観光客の余暇であって、地元に根付いた文化ではない。客が飽きたと言えば、こちらの否応なしにそれで終わりだ。

参照記事(他サイト)
門司港レトロ倶楽部
門司港レトロ - 北九州のあれこれ
閑話休題 門司港レトロ - 自治大学校同窓会第73期のホームページ
残された歴史遺産を活用したまちづくり - 住まい・まちづくり活動推進協議会
門司港レトロ地区(動画 1000kbps) - bb kitakyushu
関連項目(ガゾーン内)
門司生涯学習センター - 写真撮影地
※ その他は本文中でリンク

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