ガゾーン関門都市圏

2006年5月14日更新

衛星写真で見る日本の主要都市

アメリカ航空宇宙局(NASA)にワールドウインドという電子地球儀(無料)がある。このソフトウェアを使えば、地球の全地点(極地除く)の衛星写真が閲覧できる。単に衛星写真を眺めるのもいいが、視角を変えることもできるので、はるか高空を飛ぶようにして空中散歩するのも楽しい。

操作は難しくない。クリックで場所を移動し、マウスホイール(タッチパッドの場合はスクロール)で拡大・縮小する。視角を変える場合は右クリックしてマウスを上下左右に動かす。衛星は二つを切り替えられる。アメリカ国内の都市部は路上の車が判別できるほど拡大できるが、日本は道筋や大規模建築物(球場など)が確認できる程度である。

ワールドウインドは娯楽ソフトであって、調べ物が目的ならグーグル地図を薦める。グーグルならダウンロードやインストールは必要ないし、動作も圧倒的に軽い。

このソフトで世界の辺境と呼ばれる場所をあまねく訪ねるのは楽しい。しかしここは都市景観を扱うホームページだから、日本の主要都市をすべて同縮尺で取り上げ、もってこのソフトの紹介としたい。

札幌市

札幌市

拓殖都市だけあって内地の都市と比較すると市街地が広いが、アメリカの都市ほど広大ではない。碁盤の目状の街路はこの縮尺でも窺える。豪雪地帯にこれだけの規模の都市があるのは世界で日本だけだ。拠点を置くなら北海道東南部のほうがよかった。太平洋側の冬はうらうら晴れてドカ雪被害は少ない。都市圏人口は約220万人。

仙台市

仙台市

新興の都市圏。大都市としての足場を固めたのは1990年代で、東京資本への依存度が際立って高い。近年は支店のリストラなどの影響により、成長に急ブレーキがかかった。仙台は思いのほか気候がよく、住むにはよい場所と言われる。南の海岸沿いに仙台空港、多賀城の下に仙台新港が見える。都市圏人口は約150万人。

東京23区

東京23区

東京(と大阪)は他の都市と比較すると規模が桁違いに大きく、この縮尺では都市の全体像がつかめない。皇居を中心として円状に広がる市街地は宗教都市のようだ。社会資本はかなり貧弱で、日本の都市の評判を悪くしている。しかし、混沌とした街なみは刺激的で面白い。近年は臨海部に超高層マンションが林立し、山の手へ移動する一方だった人口動態に振り戻しがみられる。都市圏人口は3100万人。言うまでもなく、世界一である。

さいたま市

さいたま市

ひらがな市名には大都市らしい重みがないが、さいたま新都心(写真のほぼ中央)へ首都機能の一部が移転して、北日本の玄関として急激な変貌を遂げつつある。信越や北関東の都市は広域拠点性がなく、将来はさいたま市がこれらの地域を束ねる中枢拠点になりそうだ。市街地は東京都心から伸びる枝上にあり、荒川の氾濫地帯を避けて丘陵地に市街地が広がる。丘陵地は人が住むにはもっとも安全な場所である。

千葉市

千葉市

1990年代のバブル景気の頃は、21世紀は千葉の時代だと言われた。土地神話が健在で、単一地権者の広大な土地(=湾岸部)を抱えた千葉は大きな可能性を秘めていた。幕張が町開きしたころが日本がもっとも幸せだった時だろう。

川崎市

川崎市

川崎は都市が体をなしてないと言われる。都市の後背地と市域が大きく異なる。しかし川崎区だけでも相当の威力があり、羽田空港に近接した立地の強みを生かして全国展開する企業が拠点を置くことも多い。工業だけではない。

横浜市

横浜市

港町として知られるが、実際の港勢は工業集積で勝る千葉港や大市場直結の東京港に及ばない。横浜はイメージがよい。「憧れ」という漠然とした感情で実際に住民が転入してくるような都市は、世界でもそうざらにあるものではない。汚い部分を他所に押し付け、きれいな部分だけを担えるのは、首都圏という世界一の都市圏にあるからである。

静岡市

静岡市

都市の形態は仙台―多賀城によく似ている。港町・清水を静岡が呑み込んで、2005年に政令指定都市になった。二つの都市を一体化するには、主従の人口差よりも両者の市街地の融合が重要だろう。写真では静岡市中心部の駿府公園が目立つ。都市圏人口は約100万人。

浜松市

浜松市

非県都の有力都市。浜松はヤマハやホンダなどの世界的な製造業者を多数育てた土地柄。市内の工場には外国人労働者が多く、日本の未来を予感させる都市でもある。静岡県は二つの有力都市が睨み合う状態で、静岡の政令指定都市指定に危機感を抱いた遠江陣営も、一歩遅れたとはいえ大合併を成功させた。2007年には政令指定都市の指定を受ける。都市圏人口は約100万人。なお、港湾機能は浜名湖西側の豊橋にある。

名古屋市

名古屋市

日本一元気な町。「大いなる田舎」と呼ばれるのは、世界的な企業群が名古屋市ではなくその周辺にあって、周辺が中心を支配している状態だからである。日本では中心都市が富を支配し、周辺はその恩恵に授かる貧しい存在である場合がほとんどだが、名古屋では当てはまらない。このため、名古屋圏にありながら名古屋に多くを依存しない衛星都市というものが生じる。都市圏人口は約530万人。実勢は1000万人を越える。経済力では関西を上回る存在である。

京都市

京都市

古都。1000年以上にわたって大都市として君臨し続けた都市は世界でも他に例をみない。近年の京都は東方向へ展開し、京都化の波は大津に達した。大津は全国でも屈指の人口増加率を誇る。都市圏人口は260万人。関西は三核の都市地域で一つの大都市圏を形成するが、京都は神戸と比較すると独立都市圏の度合いが強い。

大阪市

大阪市

大阪は東京と同じくこの縮尺では収まらない世界屈指の大都市だが、市域が狭いために数字の上で損をする。中心部に低所得層が集中し、裕福層は郊外都市に住むなど、日本にありながら欧米の都市のような都市問題を孕む。最近は製造業の活況から活力を取り戻しつつある。京都、神戸を含む都市圏人口は約1680万人。

神戸市

神戸市

六甲山地南側の狭隘な土地に高密度の市街地が広がる。山を削って海を埋め立てる一石二鳥は「神戸方式」と呼ばれ、高度成長期は大成功した。しかしかつての成功体験をその後も引きずったため、現在は巨額の財政赤字を抱える。ポートアイランド南に造成中の神戸空港が見える。都市圏人口は220万人。

岡山市・倉敷市

岡山市・倉敷市

機能分担した双核の都市。岡山は県都として許認可権限を握り、中四国の州都を目指すという野心もある。倉敷は工業・港湾機能を有し、製造品出荷額は西日本(中四国九州)最大である。両者は一体化するには市街地の融合が乏しい。静岡―旧清水と比較してみるとよい。しかし都市圏人口は約150万人で、政令指定都市と比較して遜色ない。

広島市・呉市

広島市・呉市

狭い河川デルタに密集した都市。土地に余裕がないことから近年は都市機能が東広島に移転する傾向がある。写真を見た感じでは呉が広島の外港のようだが、呉は軍事都市であり、広島と主従関係で括れる簡単な間柄ではない。現在は製造業の活況から都市も成長に転じた。都市圏人口は約180万人。

北九州市・下関市

北九州市・下関市

関門海峡の両側に広がる都市。都市というよりは都市地域で、関西を小粒にしたような構造である。地勢の要所であることから西日本最大の人口集積を有したが、関門海峡で三重の線引きがなされ、さらに北九州・下関ともに非県都であったため、「県単位の許認可経済」という制度下では求心力を保てなかった。現在は製造業の活況から西日本でもっとも業況がよい。東の海上に浮かぶ長方形は新北九州空港である。都市圏人口は約180万人。

福岡市

福岡市

狭い平野に空港や港湾を含めたすべての都市機能を集積させた商都。計画都市でもないのに上首尾な都市計画がなされた。空港は騒音や規制があるため、市街地は平野の西側や南側に寄る。この都市の弱点は、現状で完成度が高すぎることである。近年は手を入れれば入れるほどおかしくなる状態だ。都市圏人口は約230万人。


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