2006年2月12日更新
平尾台は5月の新緑の頃と7月の梅雨時、10月のすすきの頃が美しい。梅雨時は意外と思うかもしれないが、低く垂れ込めた雨雲が台地の上を舐めるように走るのがいい。真正面から雲の塊が迫り、さあ来るぞと身構えていると、疾風のざわめきと共にあたりを白い蒸気が襲う。雲の中に入っただけなのだからひと時の嵐に過ぎないが、平尾台が中空に浮かぶ高原だと強く感じる。
冬の平尾台は寒いのでめったに近寄らないが、一つ心残りがあった。2004年1月21日の夜に出かけたとき、吹雪と積雪に行方を阻まれ、目的地に達しないまま引き返した。あれから1年と2ヶ月。おそらくこの冬最後であろう寒波が3月25日にやってきた。春先の寒波だから去年の大型寒波とは比べ物にならないが、去年の心残りを来年へ持ち越したくなかった。
平尾台といえば吹上峠や平尾台自然の郷、千仏鍾乳洞と相場が決まっているが、車内に根を下ろして外を出歩かないわたしにとっての平尾台は、この見晴台の三叉路を左に折れ曲がることによって始まる。ここから終着点の平尾台無線中継所までの道すがらを紹介したい。
見晴台三叉路を曲がると右手は篝火盆地(ドリーネ)になる。その向こうに見えるピナクルだらけの丘が貝殻山(標高472.4m)。盆地からの高さは約70m。奥の周防台から桶ヶ辻のすっきりした稜線と対比させると、ぶよぶよして不潔な感じだ。ここだけもさもさ木も生えていることから、動物に譬えるなら陰部といったところか。
目白洞手前から振り返る。手前のなだらかな丘は「地の果て」と呼ぶ。裏手は一気に180m落ちる断崖絶壁で、なかなかの見ものだ。右奥の二こぶは駱駝山(標高485m)。あちらへは道路がなく、車では行けない。
林道を逸れて目白洞前へ。奥の優しげな頂は北九州の最高峰・福智山(標高901m)。あちらは雪が降っていない。玄界灘から吹きつける季節風は平尾台の北西壁で行く手を遮られて局所的に雪雲を発達させる。このため、平尾台だけが降雪することが少なくない。
手前右の断崖は住友大阪セメント小倉鉱山、その左が三菱マテリアル東谷鉱山。鉱山前面の平らな場所は鉱山跡地を修景した平尾台自然の郷になる。
こちらは平尾台北壁の大平山(標高587m)。ここ茶ヶ床から見ると穏やかな印象だが、裏は絶壁で険しい。大平山は野焼きした後はピナクルが露出して岩肌があらわになるが、すすきが伸びてくるとだんだんと石灰岩が見えなくなり、秋には草山になる。大平山は写真を見れば撮影日に言及がなくても何月の姿かがあらまし知れる。
目白洞。平尾台で最長となる延長約2160mの洞窟。南洞、北洞、白蛇支洞に分かれる。観光洞は上穴(南洞)の200mのみだが、平尾台自然観察センター主催のガイドツアーに参加すれば北洞にも入れる。北洞奥の「洞奥の滝」は落差が20mあり、幻想的だという。入場料500円(一般)。
ここまでは一般の方もよく訪ねてくる。しかし平尾台のハイライトはここから先だろう。
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