2010年10月27日更新
業務道路は平尾台無線中継所で行き止まる。これより先は車では行けない。無精者でもたまには車の扉を開けて外へ出ようか。このあたりは平尾台の東北端であり、少し歩けば風渡る高原と眼下の世界を同時に楽しめる。
NTT正門前の階段を登って坂道を2分ほどてくてく歩き、偽水晶と四方台の尾根伝いを通る自然遊歩道へ行き着くと、北九州都心部から下曽根にかけての眺望が広がる。奥の山塊は企救半島の足立山系で、真正面が下曽根の街。山裾が遠く伸びているせいか、前出の京都平野のように眼下に見下ろすという感じはしない。
右手(東側)には偽水晶(標高566m)。ここからはまったく姿が見えないが、この山の奥に水晶山(標高531.2m)がある。水晶山の方向に水晶山が見えず、この山だけが見えるために偽水晶と呼ばれる。しかし偽水晶のほうが標高が高いのだから、偽物扱いはどうかという気がする。地上から見れば東北端の水晶山のほうが目立つのか。山名はかつて水晶を産出したことに因む。
左手(西側)には貫山(標高711.6m)。山容は穏やかだ。林道経由で自動車でも登れないではないが、褒められた行動ではなかろう。麓から歩いて登るのはきついが、塔ヶ峯林道の8合目あたりに車を乗り捨てて歩くのなら散策気分で登れる。ただし、入念に下調べしないと登山道が分かるまい。写真は日が差した瞬間に写した。気温は氷点下でも、4月も間近というだけあって日差しは暖かい。
林野火災殉職者慰霊碑。1977年3月25日、「福岡県、関係市町並びに地元関係者が平尾台で火入れ中、火入れ区域外の貫山で林野火災が発生、消防車両83台、ヘリコプター2機、消防職・団員562人が出動したが、山林、原野207ヘクタールを焼損、消火作業中の消防職員5人が殉職した」(小倉南消防署)。
この日、だれかが慰霊碑を見舞ったろうか。28年後のちょうどその日に偶然のめぐり合わせによってこの場所にたどり着いたことをいまになって知った。きちんと手を合わせればよかった。
平尾台の草原と林野を隔てる防火帯。この帯を越えて火が燃え広がると手に負えない。前出の写真にも白い帯が写ったものがいくつかあるが、防火帯は草原と林野の境には必ずある。
平尾台が草原なのは人間が「野焼き」という行為を通じて草原を維持しているからであり、人間の手が入らなくなれば風迷うすすきの原ではいられない。それは、鉱山地区の植生を見れば明らかだろう。
日が翳るととても寒い。最後に九州電力の鉄塔方面へ登る。そこからは北九州都心部から下曽根はもちろん、京都平野や周防灘が眺められる。NTT正門前の階段からは歩いて4分くらいか。終着点までやってきたからには、この丘の上まで歩くことを薦める。眼下の眺めもいいが、背中の景色も優れている。
背中にあるのはこの名無しの丘。標高575m。眺めてそれと気づく方は少ないと思うが、丘の上は広場で小学校のグラウンド程度の広さがある。だれがなんの目的で造成したのかは分からない。前頁で言及した平尾台支線林道の峠の交差点を右に曲がるとすぐにたどり着く。
夏場はキャンプする方がいるようで、昨年訪れたときに人影を見た。こんな時期にこんな辺鄙な場所へのこのこやってくるのはわたしくらいのものだ。5月の半ばになれば、ここも眩い若草色に変わる。
撮影 2005年3月25日 | 作成 2005年3月30日
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