2006年2月12日更新
天然記念物平尾台から中峠を越えると、南の周防台、西の四方台、東の広谷台に挟まれた谷間に小さな湿原が広がる。標高は道路面で約470~520m。平尾台自然の郷あたりより100m程度高い。阿蘇の火砕流に舐められて台地が砕けた場所で、石灰岩は燃え尽きて見当たらない。中峠の北側は行楽客にはあまり知られていない。
中峠を下りて最初に目につくのは、右手にある「鬼の唐手」と呼ばれる縦割れ溶岩。8万年前の阿蘇の大噴火により混入したという。平尾台の石灰岩は大理石化して丸いので、このひび割れた溶岩は素人目にも異質だと分かる。岩は落盤しないように杭を打ち込んであり、おっかなびっくり岩場に立ってそれに気づいたときは妙に興ざめした。直下に滝不動と呼ばれる水源があり、高低差は約70mある。写真の背景で輝いて見えるのは周防灘だ。
この先は右手が広谷湿原になる。写真は周防台を振り返る。平尾台支線林道は普通自動車1台分の幅員しかなく、数百m間隔で写真のような離合帯を設ける。進行方向に車を発見したら、最寄の離合帯に車を寄せて待機するのがここの暗黙の了解事項だ。
平尾台支線林道から分かれて無線中継所へ至る業務道路へ入る。林道は写真正面の崖崩れを起こした四方台の斜面を登る。峠には林道の交差点があり、直進が平尾台支線林道、左に曲がると塔ヶ峯林道に入る。右に曲がると後述する山上の広場へ行き着く。
塔ヶ峯林道は貫山の斜面をめぐり、途中塔ヶ峯に立ち寄って井手浦林道へ抜ける。平尾台支線林道は偽水晶の北斜面を通って平尾台林道へ抜けるが、わたしは通ったことがない。いずれの道のりも普通自動車には険しすぎる。
わたしはここから中峠を振り返った眺めがもっとも気に入っている。上の写真を押すとパノラマ写真を開く。
業務道路はコンクリート舗装であり、アスファルト舗装と比較すると、凍りやすく滑りやすい。ここの路面は通常なら擁壁をつくるコンクリート板を崖に突き刺して並べただけだ。冬場の雨の後はアイススケート場よろしく氷が張るから、特に注意を要する。
最後のカープあたりまで来ると、京都平野と周防灘が眼下に広がる。晴れていれば遠くに八面山も見晴らせる。標高は約510m。普通自動車で乗りつけられる場所としては平尾台でもっとも高い。車窓からの眺めは北九州で(住所は苅田町だが)もっともよいのではないか。皿倉山は山頂が車両進入禁止だから、出かけるのが面倒くさい。
終着点のNTT平尾台無線中継所。隣の丘には九州電力の無線中継所もある。九電の鉄塔はそのへんにある送電鉄塔そのものだが、高さがあって平尾台自然の郷からも頂上部が見える。NTTの鉄塔はパイプラーメンタイプ。最後のカーブを曲がらないと見えない。双方ともに無人施設だから人はいない。中継所は西は皿倉山、南は八面山と連絡すると知れるが、本州や四国の中継地点は知らない。
ちなみに去年の冬に行方を阻まれたのは夜更けだったせいもある。個人のわだかまりに証拠は必要なかろうが、わたしが夜のうちにここに到達した証拠を一枚だけ出したい。どうせなら明るくなるまで待って写真を撮ろうと、ここで仮眠して夜明けを待った。写真が進行方向ではなく後退方向ばかりになったのは、行きしなはまだ暗闇であり、帰りしな撮影した写真を出したという事情による。
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